白い鳩の歩くまま思うまま

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【Tokyo Viz Week Day2】港区で「世田谷」ナンバーをやたら見かける理由

BMWとベンツが仲良く並ぶ日常 ※この写真にはベンツしか映っていません

世田谷ナンバーがいっぱい

 港区三田にある自宅マンションから、徒歩数分のところにあるK大学構内を、ある土曜日の晴れた夕刻に友人と連れ立ってぶらぶら散歩していた。連れが本郷の出だったので、本郷との違いを色々と話しながら歩いていた。警備員さん、門のそばだけでなく構内の至る所で見かけるね。みんなきびきび動いている。うちはいつも退屈そうな顔した守衛さんが各門に一人いるくらいだよ。仲良くなると面白いんだけれど。いつもあくびしてる…等々。

 ある校舎の前にさしかかったとき、国産車(全てトヨタだった。ブランドは不詳)が3台並んで停めてあった。何気なく目をやると、3台とも揃って「世田谷」ナンバーだった。そのお隣には仲良く並ぶBMWとベンツ。こっちは「横浜」ナンバー。この光景にはさすがに笑ってしまった。連れ曰く、「世田谷」3連発もすごいけど、本郷でBMWとベンツが並ぶ光景なんてみたことない。誰の持ち物?教授?職員の愛車?それとも学生のおもちゃかしら?ここの学生の私物でもおかしくないという気がしてくるから不思議だよね。

 この例に問わず、自宅付近で「世田谷」ナンバーの自家用車を非常にたくさん見かける。エリアとしては「品川」ナンバーだから一番多いのはやはり「品川」ナンバー。次に「世田谷」、「横浜」の順で見る気がする。港区と世田谷区は隣接してないし、直通の電車も(おそらくバスも)ない。どの路線で向かっても最低一回は乗り換えが必要のはずだ。だからみんな車の方が便利だから車で来るのかな思ったが、それにしても多い。オフィスの駐車スペース、住宅街の中にある駐車場、マンションや一戸建ての前の路上にも「世田谷」がいる。さらに大通りで信号待ちしている中にも高確率で「世田谷」が混じっている。なんでかなと気になりつつ、港区のオープンデータサイトを眺めていて偶然見つけたのがこの統計。

港区に来る人はどこから来る?港区の人はどこへ行く?

https://public.tableau.com/app/profile/haruna.matsumoto/viz/MapofSocialPopulationMovementsinMinato-Ku/Main

 データを整理して可視化してみると、ある意味予想通りの結果が出た。通勤、通学共に、千代田区中央区の都心2区を除いて、渋谷区、品川区、目黒区、大田区、世田谷区など、城南地域からの流入が顕著だったのだ。対照的に、北と東の区からの流入はわずか。港区内でやたら世田谷ナンバーの自家用車を見かける理由、その裏付けが取れたようである。世田谷区は通勤通学共に実数ベースでみて港区へ流入第2位なので、大田区に次いで港区に最も多くの昼間人口を供給している区のひとつであると言える。流入人口総数における割合でみると品川区、大田区の次に位置するが、それでも全体の約15%が港区で就業し、約10%が就学しているのは他区に比して十分すぎるほど大きい。

 逆に港区からの流出では、通勤では千代田区、通学では千代田区、渋谷区、新宿区が多い。こちらは比較的近隣の区が目立つ。そして城北や城東の区はここでも少数派。港区を中心とする世界は案外スモールワールドである。

データの出典

 流出入人口は港区の行政資料集から引用。資料集じたいは平成30年刊行だが、データは平成27年、つまり2015年国勢調査のものだ。流出人口は実数であるが、流入人口は実数だけでなく、同じく2015年国勢調査のデータから、それぞれの区における「同一県内他区で従業・通学」する人数を分母にして、これを港区への流出人口で割った値でも比較した。こうすることで、それぞれの区における他区への流出総数のうち、港区への流出が占めている割合をみることができる。つまり、港区視点でどこから来たのかをみるだけでなく、各区目線でどこに行くのかも合わせてみているのである。

 また、各データの入手先は以下の通り。

opendata.city.minato.tokyo.jp

www.stat.go.jp

今回のチャレンジポイント

 今回のテーマは、港区にやってくる人、港区から出る人の地域的特性を、通勤と通学別の流出入人口データから観察することである。テクニカルな手法はほとんど使用していないが、地図の上に始点と終点を置き、その2点をつなぐ通称フローマップを作ってみたかった。そこで、港区への流入人口はコロプレス図、港区からの流出人口をフローマップでそれぞれ作成して、見比べてみた。なお、フローマップにおける終点は、23年10月現在の各区の区役所所在地とした。

 作ってみてあれだが、いつも作るコロプレス図の方がわかりやすい。フローマップを作るとしたら、始点と終点に意味がある場合に限るべきかも。今回は特定の地点間ではなく、ある程度まとまりのある面的な地域間の移動なので、コロプレス図で充分目的を達することが出来る。

あとがきにかえて

 「世田谷」ナンバーの「自家用車」をよく見かけるということは、車通勤している人がいるということだ。東京23区は駐車場代が高い。自宅併設で駐車スペースを有してもいない限り、自家用車保有者にとっては厳しい環境。安価な公共交通機関を使用するのではなく、あえて車で来る。そこにある種のプライドと余裕を…感じないでもない。