白い鳩の歩くまま思うまま

足で稼いだ情報から、面白いデータの世界が見えてくる

【Tokyo Viz Week Day8】Friday Night in Tamachi & Mita|オフィス街・学生街には大衆居酒屋あり

三田の三角廻れば四角、薩摩屋敷は七曲り*1

  • はじめに
  • データとその定義について
  • ターゲットエリア-東京23区の縮図-
  • 4軒に1軒が居酒屋
  • 田町・三田のNoodle Map
  • 席数とディナー客単価の関係
  • 平日のみ営業する店舗が全体の約25%を占める
  • まとめ
  • あとがき-三田の美学-

はじめに

「都市」は生き物であり、時間とともに多種多様な構成要素が複雑に交差し影響しあう有機体である。その中からある地区を「街」として切り出してみても、その複雑性は変わらない。そこで「街」を構成する多数の属性のうち、一つの属性にだけ着目してみよう。本プロジェクトは「飲食店」という視点から、隣接していながら全く異なる二つのある「街」の「個性」を描き出す。まず今回登場するのは都心のオフィス街、学生街として有名な田町・三田。日本有数の富裕層と、そのおこぼれにあずかろうとする輩がひったきりなしに集まる港区にありながら、ある意味港区らしくない匂いがあるこの街にはどのような「顔」があるのか。

Vizはこちらから→https://public.tableau.com/app/profile/haruna.matsumoto/viz/FridayNightinTamachiMita/Top

*1:港区立三田図書館所蔵の赤尾兼草『慶応仲通南振興会由来記』(慶応仲通南振興会、1968)よりp29

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【Tokyo Viz Week Day6】RemakeVizTokyo #1 老いゆく東京

https://public.tableau.com/views/AgingPopulationinTokyos23Wards/Page1?:language=ja-JP&:display_count=n&:origin=viz_share_link

この企画について

 RemakeVizTokyoは、Tableau界では有名すぎるあの企画、MakeOver Mondayにリスペクトした企画であり、世に出回るちょっとイマイチな?「東京にまつわる」グラフ記事を、ちょっとだけクールに?作り替えていこう!という趣旨。世界にはまだまだたくさん作り直しがいのあるグラフ表現であふれている。条件は、①東京に関する記事であることと、②東京都のオープンデータを用いて作成されていること、の2点。

今回のお題

 今回はこちらのグラフをMakeoverした。東京23区における高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合。ただし総人口から年齢不詳人口を除く)を区別集計して比較したもの。

 ちなみに元記事はこちら。本文中には、高齢化率だけでなく、年少人口や生産年齢人口についても言及があるものの、それらを掲載することで特にこれといった意図があるわけでもなく、やや記述が散漫なところがあると感じたので、今回は高齢化率のみに焦点を絞ることに決定。

fp-research.co.jp

 データに関して1点注意がある。元記事は2022年8月1日現在の各区人口統計データをベースにしており、作成当時最新データが取得できなかった一部の区においては2022年1月及び4月、7月の数値を採用したと記載しているが、今回作るものに関しては、すべて2022年1月1日時点のデータに揃えた。データの出典は東京都総務局統計部の公式HPだ。

www.toukei.metro.tokyo.lg.jp

改善すべきと感じた点

 全体的に情報が多すぎてごちゃごちゃしている印象を受けた。まずは必要な情報だけに絞って、次に見せ方を考えたほうが良い気がする。具体的な改善点は以下の通り。

  1. ラベルが棒グラフと重なっており見づらい。とくに区名をグラフ上に掲載してしまっている点。また、軸を表示しているのにも関わらずグラフ中にも数値を掲載しているので、同じデータを2重に表示しており、これもグラフがごちゃごちゃする要因になっている
  2. 高齢化率の上位5位を赤字かつ少し大きめのラベルで表示しているが、これでは棒グラフではなくラベルの方に目が行ってしまう
  3. グラフ中には23区しか表示していないのに、東京都平均と全国平均をグラフ中に表示する意味はあるのか?東京23区平均との比較だけで充分ではないか?
  4. 軸が0%スタートになっていないため、あまり正確でない方法で差異を強調している
  5. 高齢化率が高いエリアには地理的な傾向が見られるので、プラスαで地図による表現を検討してもよさそう

改善した内容

 単純に各区の数値を比較するだけでは、最大でも差分10%と小さいので、「東京23区平均との差分」によって各区を比較することにした。具体的には、各区の数値と23区平均との差分を取り、プラスになるかマイナスになるか、および差分の大きさに応じて色分けした。これなら軸を0%スタートにするといったグレーなテクを使う必要なく、各区の差異を強調できる。

  1. 各区の高齢化率はシンプルなロリポップチャートで表現。まずこれで実際の数値を確認する。軸は煩わしいので削除して、差分が出やすい15%、20%、25%のみリファレンスラインで補助線を引く
  2. 次に23区平均との差分をとり、バーチャートで表現して、昇順でソートする
  3. 地理的分布を見るために、23区平均との差分で色分けしたコロプレス図を作成
  4. 最後に23区平均と全国平均をテキストで別枠に表示

感想

 千代田区中央区、港区の都心3区で高齢化率が低く、都心から見て北側(城北)および東側(城東)の区で相対的に高い傾向が一目瞭然だ。都心3区は、近年タワーマンションが多数建設され、夫婦ともに高収入なパワーカップルが続々と流入していると言われる*1が、実際に2000年から2015年の15年間における東京23区居住者の年収と居住地選好の関係を調査したある論文によれば、年収階層が高いエリアほど高齢化率が低くなり、逆に年収階層が低いエリアほど高齢化率が高まっているという*2。別のある識者は、東京都の各種統計を引用して、これまで東京23区の出生率トップ3であった足立区、葛飾区、江戸川区の3区が、2014年前後からその順位を下げ、代わりにトップ3に躍り出たのが千代田区中央区、港区の都心3区であることを指摘し、この3つがいずれも東京23区の高所得エリアであることから、近年では所得の高低が出生率に影響し、高所得者ほど子供を持ちやすくなりつつある現実を「結婚は贅沢な消費と化した」と表現した*3。今回は高齢化率のみに注目したが、その裏には東京23区全体を揺るがす所得格差問題が潜んでいるようである。それは古くも新しい話題であり、東京が抱える永遠のテーマでもある。

*1:ざっと検索した限りでも以下のような記事がヒットする。「湾岸なんて、液状化しない?」なんてネガティブな先入観を持っていた記者が心変わりするストーリものの、赤沢奈穂子(2022-10-17)「気になるあの街に行ってみた!パワーカップルひしめく「豊洲」購買力格差を捉えた階層別エリアマーケティング」J-marketing.net、最終閲覧2023/10/19。エリアの世帯年収を調査した、ワイガヤBlog(2017-4-5)「タワーマンション世帯年収調査【東京 豊洲編】」最終閲覧2023/10/19。

J-marketing.net

waigaya.jp

*2:佐藤宏亮(2023)「東京都23区における年収階層による居住地域の分化に関する研究」日本建築学会計画系論文集 第88巻 第809号, 2169-2178より

*3:荒川和久(2023-01-27)「東京中央区出生率トップ「結婚も出産も豊かな貴族夫婦だけが享受できる特権的行為」となったのか?」YAHOOニュース、2023/10/19最終閲覧より

【Tokyo Viz Week Day5】関東大震災100年プロジェクト|Part 2:なぜ下町で被害が大きかったのか?

ライトアップされた永代橋。関東談震災からの復興橋のひとつで1925(大正15)年に竣工した。

 ああ、大東京。
 南西は品川、高輪より半弧を成す芝浦、京橋、深川、洲崎、砂町のその地域の規模の広大さ。近くは越中島の白煙突黒煙突、赤倉庫、水産講習所、灰色の東京市古米倉庫、小栗飛行場、新鮮な電燭の閃々とかがやき出た弁天町の遊廓。大突堤
 夜景、夜景、夜景を見よ。
 震災後の東京、ともするとバラックが低く一大広野とも見ゆる一円の復興中の市街の大観において、その所々に高く、紅く、或は黄色に点じた高楼大厦のイルミネーション。
――北原白秋(1927)「大川風景」『大東京繁昌記 下町篇』(講談社、1976)収録よりp110参照

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【Tokyo Viz Week Day4】関東大震災100年プロジェクト|Part 1:東京市15区における被害の程度を可視化する

時事新報社(1923)『東京及横濱復興地圖』。画像は公益財団法人全国市有物件災害共済会 防災図書館所蔵より。
昭和通り靖国通り、蔵前橋通り等、東京都心を貫く主要道路は震災復興計画で実現したものばかりである。

 同じ都会の中でもこんなに町が動いていることは、東西共に変りはないようだ。これは交通機関の移動や市区の改正により、市場の変遷に伴う幾多の関係により、地価の騰貴、沿道改築費の負担、諸税の増加、その他種々な経済事情によることはもとより言うまでもないが、しかしそればかりでなしに、町には町の性格があり、生長があり、老衰があり、また復活があって、一軒二軒の力でそれをどうすることの出来ないようなところもあるかと思う。(中略)
 過ぐる年の震災が来た。その時になって見ると、この飯倉附近にある古いものが、にわかに光って見えて来た。何故かなら、ここにある古い商家の黒光りのした壁、その紺暖簾のかかった深い軒なぞは、今ではもう日本橋あたりにも見られないものであろうから。私はあの石町、大伝馬町それから橘町あたりに軒を連ね甍を並べていた、震災以前の商家の光景を忘れることの出来ないものであるだけに、一層この感が深い。
――島崎藤村(1928)「飯倉附近」『大東京繫昌記 山の手篇』(平凡社ライブラリー、1999)よりpp14-15参照

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【Tokyo Viz Week Day3】社長は東京23区のどこに住む?

赤坂・檜町公園の静寂。グレーの個性的な屋根を持つ建物は秀和赤坂レジデンシャルホテル
  • はじめに
  • データセットについて
  • 社長の住む街にも色々ある
    • ①元祖「超」高級住宅地
    • ②郊外の田園住宅地
    • ③下町あるいは江東の商工業地帯
    • ④タワマン下剋上でプチセレブ化した新興住宅地
  • 今回のチャレンジポイント
  • 社長は港区に回帰する

はじめに

 東京都心という場所は、これほど緑豊かなところなのかと思った。今まで暮らしてきた江戸川周辺や、埼玉の延長線上にある池袋界隈は、東京23区内とはいえ郊外に属する部類、河川敷は広々と、芝生を囲み築山が配されて、木影が涼しい大中の公園があっても驚くほどのことでもないが、地価は高い、土地は狭い都心の一等地、オープンスペースの確保がこれほど贅沢な趣味となる場所も都内では数えるほどであろう、赤坂、六本木、麻布、三田、白金、高輪のまちなかに、中央に湧水池をたたえた回遊式庭園、長い塀の向こうにうっそうと広がる雑木林、社寺を取り囲む鎮守の杜、道端に並ぶ老樹の並木等が、当たり前のように存在していることに驚いた。赤坂の御用地と檜町公園、南青山の神宮外苑根津美術館、芝の愛宕山芝公園、六本木の国際文化会館を含む鳥居坂付近、麻布の有栖川宮記念公園と善福寺、三田の綱町三井倶楽部イタリア大使館、高輪の皇族邸と関東閣、白金台の附属自然教育園八芳園。。。社寺などを除き、その多くは限られた人々のみ足を踏み入れることの出来るプライベートガーデンであり、一般人の立ち入りを固く禁じているが、所有者の変更と共に自治体や団体に寄付され、公園として一般公開するに至った例もある。

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【Tokyo Viz Week Day2】港区で「世田谷」ナンバーをやたら見かける理由

BMWとベンツが仲良く並ぶ日常 ※この写真にはベンツしか映っていません
  • 世田谷ナンバーがいっぱい
  • 港区に来る人はどこから来る?港区の人はどこへ行く?
  • データの出典
  • 今回のチャレンジポイント
  • あとがきにかえて

世田谷ナンバーがいっぱい

 港区三田にある自宅マンションから、徒歩数分のところにあるK大学構内を、ある土曜日の晴れた夕刻に友人と連れ立ってぶらぶら散歩していた。連れが本郷の出だったので、本郷との違いを色々と話しながら歩いていた。警備員さん、門のそばだけでなく構内の至る所で見かけるね。みんなきびきび動いている。うちはいつも退屈そうな顔した守衛さんが各門に一人いるくらいだよ。仲良くなると面白いんだけれど。いつもあくびしてる…等々。

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