白い鳩の歩くまま思うまま

足で稼いだ情報から、面白いデータの世界が見えてくる

【Tokyo Viz Week Day6】RemakeVizTokyo #1 老いゆく東京

https://public.tableau.com/views/AgingPopulationinTokyos23Wards/Page1?:language=ja-JP&:display_count=n&:origin=viz_share_link

この企画について

 RemakeVizTokyoは、Tableau界では有名すぎるあの企画、MakeOver Mondayにリスペクトした企画であり、世に出回るちょっとイマイチな?「東京にまつわる」グラフ記事を、ちょっとだけクールに?作り替えていこう!という趣旨。世界にはまだまだたくさん作り直しがいのあるグラフ表現であふれている。条件は、①東京に関する記事であることと、②東京都のオープンデータを用いて作成されていること、の2点。

今回のお題

 今回はこちらのグラフをMakeoverした。東京23区における高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合。ただし総人口から年齢不詳人口を除く)を区別集計して比較したもの。

 ちなみに元記事はこちら。本文中には、高齢化率だけでなく、年少人口や生産年齢人口についても言及があるものの、それらを掲載することで特にこれといった意図があるわけでもなく、やや記述が散漫なところがあると感じたので、今回は高齢化率のみに焦点を絞ることに決定。

fp-research.co.jp

 データに関して1点注意がある。元記事は2022年8月1日現在の各区人口統計データをベースにしており、作成当時最新データが取得できなかった一部の区においては2022年1月及び4月、7月の数値を採用したと記載しているが、今回作るものに関しては、すべて2022年1月1日時点のデータに揃えた。データの出典は東京都総務局統計部の公式HPだ。

www.toukei.metro.tokyo.lg.jp

改善すべきと感じた点

 全体的に情報が多すぎてごちゃごちゃしている印象を受けた。まずは必要な情報だけに絞って、次に見せ方を考えたほうが良い気がする。具体的な改善点は以下の通り。

  1. ラベルが棒グラフと重なっており見づらい。とくに区名をグラフ上に掲載してしまっている点。また、軸を表示しているのにも関わらずグラフ中にも数値を掲載しているので、同じデータを2重に表示しており、これもグラフがごちゃごちゃする要因になっている
  2. 高齢化率の上位5位を赤字かつ少し大きめのラベルで表示しているが、これでは棒グラフではなくラベルの方に目が行ってしまう
  3. グラフ中には23区しか表示していないのに、東京都平均と全国平均をグラフ中に表示する意味はあるのか?東京23区平均との比較だけで充分ではないか?
  4. 軸が0%スタートになっていないため、あまり正確でない方法で差異を強調している
  5. 高齢化率が高いエリアには地理的な傾向が見られるので、プラスαで地図による表現を検討してもよさそう

改善した内容

 単純に各区の数値を比較するだけでは、最大でも差分10%と小さいので、「東京23区平均との差分」によって各区を比較することにした。具体的には、各区の数値と23区平均との差分を取り、プラスになるかマイナスになるか、および差分の大きさに応じて色分けした。これなら軸を0%スタートにするといったグレーなテクを使う必要なく、各区の差異を強調できる。

  1. 各区の高齢化率はシンプルなロリポップチャートで表現。まずこれで実際の数値を確認する。軸は煩わしいので削除して、差分が出やすい15%、20%、25%のみリファレンスラインで補助線を引く
  2. 次に23区平均との差分をとり、バーチャートで表現して、昇順でソートする
  3. 地理的分布を見るために、23区平均との差分で色分けしたコロプレス図を作成
  4. 最後に23区平均と全国平均をテキストで別枠に表示

感想

 千代田区中央区、港区の都心3区で高齢化率が低く、都心から見て北側(城北)および東側(城東)の区で相対的に高い傾向が一目瞭然だ。都心3区は、近年タワーマンションが多数建設され、夫婦ともに高収入なパワーカップルが続々と流入していると言われる*1が、実際に2000年から2015年の15年間における東京23区居住者の年収と居住地選好の関係を調査したある論文によれば、年収階層が高いエリアほど高齢化率が低くなり、逆に年収階層が低いエリアほど高齢化率が高まっているという*2。別のある識者は、東京都の各種統計を引用して、これまで東京23区の出生率トップ3であった足立区、葛飾区、江戸川区の3区が、2014年前後からその順位を下げ、代わりにトップ3に躍り出たのが千代田区中央区、港区の都心3区であることを指摘し、この3つがいずれも東京23区の高所得エリアであることから、近年では所得の高低が出生率に影響し、高所得者ほど子供を持ちやすくなりつつある現実を「結婚は贅沢な消費と化した」と表現した*3。今回は高齢化率のみに注目したが、その裏には東京23区全体を揺るがす所得格差問題が潜んでいるようである。それは古くも新しい話題であり、東京が抱える永遠のテーマでもある。

*1:ざっと検索した限りでも以下のような記事がヒットする。「湾岸なんて、液状化しない?」なんてネガティブな先入観を持っていた記者が心変わりするストーリものの、赤沢奈穂子(2022-10-17)「気になるあの街に行ってみた!パワーカップルひしめく「豊洲」購買力格差を捉えた階層別エリアマーケティング」J-marketing.net、最終閲覧2023/10/19。エリアの世帯年収を調査した、ワイガヤBlog(2017-4-5)「タワーマンション世帯年収調査【東京 豊洲編】」最終閲覧2023/10/19。

J-marketing.net

waigaya.jp

*2:佐藤宏亮(2023)「東京都23区における年収階層による居住地域の分化に関する研究」日本建築学会計画系論文集 第88巻 第809号, 2169-2178より

*3:荒川和久(2023-01-27)「東京中央区出生率トップ「結婚も出産も豊かな貴族夫婦だけが享受できる特権的行為」となったのか?」YAHOOニュース、2023/10/19最終閲覧より